2023.3.3. RELEASE (Digital 3.10)
ターリ
【日本先行発売・日本盤ボーナス曲】
taali
RPOP-10039
定価2,640円(税抜価格2,400円)
解説:渡辺 亨
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PV「It Comes For You」
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PV「Is It Right?」
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ホセ・ジェイムズの自主レーベル「レインボー・ブロンド」のアーティストとして、また公私にわたるパートナーであるターリの最新作。パンデミック中の二人の放浪の記録が刻まれたインディー・ロックにも接近したエモーショナルなサウンド。
■NY出身の女性シンガー・ソングライター、ターリ(taali)は、ホセ・ジェイムズが立ち上げた自主レーベル「Rainbow Blonde」の第一弾アーティストとして2019年にデビュー作『アイ・アム・ヒア』をリリース。同年にホセと結婚して、それ以来共同で音楽活動を行っている(最近ではホセ・ジェイムズ前作『New York 2020』でもfeaturingアーティストとして参加)。もともとホセがそのソングライティングの才能を見抜き、自身のアルバム『ホワイル・ユー・アー・スリーピング』、『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』でもソングライターとして起用しただけあり、その才能が証明されたデビュー作として話題になった。
■この新作はパンデミック期間中にやむなく様々な世界中の都市(NY、LA、ギリシャ、アムステルダム)をホセ・ジェイムズと共に移り渡ったその放浪の記録でもあり、その過程で自身と向き合ったアルバム。各都市の当時の雰囲気がほぼ時系列で曲順として反映されている。「自己発見」「放浪」「友情」他が複合的なテーマとなっており、女性的な深みがある作品のため国際女性月間(International Women’s Month)にリリースされる。
■制作にあたって指標としたアーティスト/アルバムはスフィアン・スティーヴンス『Carrie & Lowell』や、パンデミック下にリリースされたフィオナ・アップル『Fetch The Boltcutters』、ベックの諸作等。特にスフィアン・スティーヴンスのダブル・ヴォイスとシンセによる音風景、ベックの使うギター&シンセ・サウンド、そして歌唱法やリリックはポール・サイモン、ジョニ・ミッチェルに影響され制作された。サウンドは、ほぼターリのヴォーカル/シンセのプログラミングで制作され生楽器が入っていなかった前作『アイ・アム・ヒア』よりもオーガニックで、エレクトリックとの境界線をまたぐLAインディー・ロック的な音も取り入れている。アナログな楽器を必要としたため本作ではレーベルメイトのベン・ウィリアムス(b)、インディー・ロック・シーンで活躍するダスティン・カウフマン(ds)、ホセ・ジェイムズ『ノー・ビギニング・ノー・エンド2』の共同プロデューサーであるブライアン・ベンダー(g)、他にオランダの弦楽四重奏団も参加。
01.ディド・ウイ・ダイ? DID WE DIE?
02.ホエン・ザ・ダスト・セトルズ WHEN THE DUST SETTLES
03.イズ・イット・ライト? IS IT RIGHT?
04.コンヴォルテッド・シティ CONVOLUTEF CITY
05.エニウェア ANYWHERE
06.スフィナリ SFINARI
07.メイド・トゥ・フライ MADE TO FLY
08.サムウェア・オーヴァー・カンザス SOMEWHERE OVER KANSAS
09.バーン・イット・ダウン BURN IT DOWN
10.イット・カムズ・フォー・ユー IT COMES FOR YOU
11.シルヴァー・バレット(ソング・フォー・シマ)
SILVER BULLET(SONG FOR SIMA)
12.ワン・ウェイ・フライト ONE WAY FLIGHT
13.ディド・ウィ・サヴァィヴ? DID WE SURVIVE?
【日本盤ボーナス・トラック】
14.ワン・ウェイ・フライト(Alternate Version)
ONE WAY FLIGHT(Alternate Version)
ターリ (タリア・ビリグ) taali AKA Talia Billig
(vocals, piano, synths, handclaps)
ベン・ウィリアムス Ben Williams (bass)
ダスティン・カウフマン Dustin Kaufman (drums)
ブライアン・ベンダー Brian Bender (guitar, synths)
ホセ・ジェイムズ José James (handclaps)
アヴラム・ビリグ Avram Billig (handclaps)
ローラ・ファン・デル・ストゥープ Laura Van Der Stoep(viola)
マリーケ・デ・ブラン Marieke De Bruijn(violin)
メリッサ・アン・ユーザリィ Melissa Ann Ussery(violin)
ヨス・テイケン Jos Teeken(cello)
*All songs, vocal arrangements,
string arrangements by Talia Billig
*Produced by Talia Billig and Brian Bender
*Mixed by Brian Bender at Motherbrain West, Los Angeles
*Mastered by Frank Arkwright at Abbey Road Studios, London
《ターリによるアルバム説明》
■作品全体に通底するテーマについて:
このアルバムにはいくつかのテーマがありますが、それらはすべて試練を通して真実を発見することに結びついています。このアルバムは深い痛みから生まれ、静寂の中で作られ、家と旅先で作られました。そしてこのアルバムには友人との再会、発見、新しい種が育つのを見守る喜びも込められています。このアルバムは間違いなくパンデミックから生まれたものですが、単純にCOVID-19のアルバムというわけでもありません。COVID-19をテーマにしたアルバムを何枚も聴いてきてどれも大好きですが、「6フィートの距離」「マスク」「再会」といった“時代 ”を感じすぎてしまうのです。COVID-19のトラウマの合間に多くの時間をかけて今回の曲たちと生活して作り上げたものだから、そのカテゴリーに自分のアルバムは当てはまらないと思っています。COVID-19テーマのアルバムよりも私はずっと大きなものを感じるのですが、それはこのアルバムを通して自分自身を見つけたからだと思います。
■各都市でレコーディングしたことについて:
このアルバムはニューヨークから始まることを意図していますが、同時に深い苦痛を感じるところから始まることも意図しています。絶対的なパニックからです。自分の住んでいる地域が死んでいくのを見たときのとても深い痛み、そして自分自身がCOVIDで死に直面しかけたこともあります。アルバム冒頭の「Did We Die?」には、私が自らアレンジしたストリングスが収録されています。これは私自身が死と隣り合わせになった後、その問いを見つめ直そうとしたものです(結局、死とは何なのか?死によって人は生まれ変われるのか?)。繰り返されるテーマが、周りのメロディーとともに成長し深化していく。それは2曲目 「When The Dust Settles」にシームレスに移行し、嵐のシーンを設定します。ニューヨークを脱出してロスと行き来している様子を描いたこの曲は、ニューヨークでパンデミックがピークを迎えていたときにできました。ハリケーンの中にいるとしか思えなかった。次の3曲目「Is It Right?」では、その嵐の中で見つけたものを検証しています。アルバムは次の「Convoluted City」(故郷のニューヨークを離れるときの混乱)を経て、アムステルダムに移った5曲目「Anywhere」に着地するのです。“私たちは運河を渡って航海し、緑の光の海が私たちを海岸まで導いてくれた ”という歌で、マンハッタンの運河近く、キャナルストリートについて書いたものですが、私たちはまたもや運河の土地に行く高揚感があります。
その後、アルバムは喜びの空間へと移行します。6曲目「Sfinari」(ホセと私が夏の間ギリシャに住んでいたときに書いたもので、ジョニ・ミッチェルやレナード・コーエンがかつて住んでいた場所)がその中間点として機能し、私たちを受け入れてくれたアムステルダムと関連する7曲目「Made To Fly」でB面を形成するのです。アムステルダムに逃げ込んだことで、どれだけ充実した時間を過ごせたか。あまりに陽気で自由な瞬間を実感しました。 8曲目「Somewhere Over Kansas」は、その後ロスでのアルバム・セッションに向かうフライト中に書きました。私が住んでいて、去って、そして今戻ってきた街。。続く「Burn It Down」 と「It Comes For You」 はどちらも、これまでのトラウマを振り返っています。パンデミックを乗り越えてくれた友人の一人、シマへの歌を挿入し(タイトルはジョニ・ミッチェルの「シャロンのための歌」を意識しています) 、「One Way Flight」で今回の放浪の旅を象徴させています。そして、アルバム冒頭曲と同じピッチの「Did We Survive?」で終わります。私はユダヤ人女性らしく「私たちは生き残ったのか?」という問いを、答えるのではなく、問いとして残しました。その答えは聞き手が推理することで終わります(ユダヤ教には議論と質問を常に強調する伝統があり、このアルバムにもタイトルが質問(?)になっている曲もいくつかあります)。そしてまた同じピッチの1曲目「Did We Die?」が始まります。このアルバムは繰り返し再生し、繰り返し聴き、再考するためのものです。
■目指したサウンドについて:
私は2020年に250曲ものデモを書きました。それをホセと真剣に30曲くらいに絞り込み、2021年の初めアムステルダムにいる間にデモ録音に取り掛かりました。ひとつだけわかっていたのは、よりオーガニックで、よりアナログな楽器を使ったサウンドにしたかったということです。わざと不完全な部分を残し、生身のミュージシャンによって作られたことを示すインディー・ロック・サウンドのようなものを。1stアルバム『I Am Here』には生楽器が1つも入っていませんでした。シンセ、ドラム、その他の音はすべて共同プロデーサーだったジョサイア・コシエと私がプログラムし、私がMIDIコントローラーを使って演奏したものなんです。今回私は、再生ボタンを押してAbletonを操作するよりも指の下にある鍵盤やライヴ演奏のリスクと喜びを切望していました。結果的に私が求めていた音、オーガニックとエレクトリックの境界線をまたぐものに近づいたと思います。ダスティン・カウフマンとはニュースクール時代からの友人で、ベースはレーベルメイトのベン・ウィリアムスにお願いしました。ブライアン・ベンダーのギターパートは後から追加したもので、彼のギターのセンスは私のシンセサイザーでは実現できなかった方法で、私たちが求めていたベックのようなサウンドを加えてくれました。
曲の形式は、ポップな形式である『I Am Here』とは違い型にはまらないスタイルを採用しました。M3, 6, 8などは曲の境界線を引き延ばしたもので、同世代の親友ベッカ・スティーヴンスとの類似があると思います。同じく大好きなスフィアン・スティーヴンスの曲は、有機的であると同時に無機的であるため、曲の境界線を押し広げます。このアルバムに通底するパニックと死に敬意を表して、音楽的にどのような風景を創り出すかを考えたとき、それが鍵になりました。そしてピアノを特別に扱いました。ダンパーペダルのついたヤマハのピアノのような音にしたかったので、ブライアン・ベンダーのピアノを使いハンマーの裏の空間をテープで固定しました。これがアルバム全体のベースとなりました。そしてクワイアです。このアルバムは私の「楽器としての呼吸」というコンセプトも強く意識して作られています。
このアルバムは自己発見、旅行、エンパワーメント、女性の友情が共通のテーマです。明らかに「私」が中心になっているので、アルバム・タイトルをセルフタイトルにしなければならなかったのは明らかです。このアルバムは深く女性的なものだから、国際女性月間にアルバムをリリースすることは理にかなっていると思います。そして、ソングライターとして、プロデューサーとして、さらに一人の女性として私がどれだけ成長したかを示す集大成です。このアルバムはがこれからどこに向かっているのかを示すものであって欲しいと思っています。
■アルバムに影響を及ぼした作品/アーティストについて:
パンデミック期に発表されたフィオナ・アップルの『Fetch The Boltcutters』は私のビーコンとなりました。私が目指していた歌詞と音楽の正直さの新しいレベルとしてです。同様に、真の北極星として選んだのがスフィアン・スティーヴンスの『Carrie And Lowell』です。そのダブルヴォイスイスとシンセの風景は私たちが目指していた空間となりました。影響を受けた三角形の最後のポイントが私の好きなアーティストの一人であるベックです。具体的には彼のサウンドやシンセサイザーを多用したランドスケープを目指しました。具体的には「Is It Right?」で聴くことができます。その他、ポール・サイモンのような歌い方と歌詞の書き方(「Sfinari」)、ジョニ・ミッチェルの曲のように必ずしも最後の最後まで解決しないような形(「Burn It Down」)、レジーナ・スペクターのような、ポップな曲をポップではない精神性で表現するやり方、などです(「Made To Fly」と「Anywhere」)。